道路護岸における越波による通行障害とその対策について

摘要

護岸の設計においては，背後地の利用形態に応じて適切な越波流量を設定する必要がある.護岸背後に道路がある場合は，自動車の安全な通行を確保するため，高波時の波の打ち上げを抑えることが重要である.しかしながら既設の道路護岸の場合には，予算面の制約や海域利用者との調整が難しく，適切な護岸改良が行えない場合が少なくない.こうした場合に管理者は，越波による危険が生じる個所に対して気象情報と現地における目視調査の結果から，速度制限や通行止めなどの道路規制を行っているのが現状である.越波による車両通行への影響としては，越波水塊の落下による車両破損のような直接的な被害と，飛沫成分の飛散による一時的な視界障害のような間接的な被害に分けられる.こうした臨海道路を適切に管理するためには越波現象自体の解明と予測手法の確立が重要である.福田ら(1973)は，現地観測結果に基づいて背後地の利用状況と許容越波流量の関係について検討している.また構造物への波の衝突による飛沫の発生に関しては，石田ら(1982)が実験的な研究を行っている.しかしながら，実際の臨海道路における通行障害を分析した研究は少ない.これまで筆者らは，道路護岸を対象として越波状況の現地観測を行い，越波と通行障害の関係を分析した(木村ら，1998).本研究では，比較的水深が浅い消波ブロック被覆型護岸(以下「消波護岸」と表記する)を対象として，越波水塊の打ち上げ特性を調べるとともに，現地の道路護岸に対する具体的な対策工について検討した.